今回は、意思疎通の三要素のふたつ目にあたる「感情のパトス」について解説をしていきます。
パトスは、弁論術では「聴き手の感情」と訳されるように、感情に働きかける仕事を指します。
ロゴスより先にパトスを展開する理由について、理解を深めていただけると幸いです。
動画講義
ロゴス(理性)より、パトス(感性)が先に来る理由(仮説)
私たち人間の脳は、条件反射や生理反応を司る動物的な脳(小脳)と、思考や論理を司る人間的な脳(大脳)が存在します。
そして、外部から刺激を受けて、脳が電気信号を送る速度は、動物脳の方が早いことがわかっています。
なぜなら、命の危機にさらされる野生において、動物は「考える」よりも先に「反射する」必要を求められる場合があるからです。
たとえば、毒を口にして拒絶反応を起こしたり、熱いものに触れて手を引っ込めたりするのは、理性(ロゴス)ではなく、本能(パトス)の反応です。
コミュニケーションにおいても、理性使って、話の真偽を確かめたり、行動の判断を下すよりも先に、感性で「話し手は敵か味方か」「好きか嫌いか」という反応が起こり、「敵」や「嫌い」という判断がされれば拒絶されてしまいます。

共感するためには、幅広い経験が必要
万人に対して幅広く共感するためには、様々な体験や経験を積むことが求められます。
たとえば、相手が「クラシック音楽が好き」ということが発覚したとき、クラシックに対する知識が皆無であれば共感ができませんが、ある程度学んでいれば会話の土台を作ることが出来ます。
異性との共感、年上(年下)との共感、海外の方との共感。といった広い共感力を身に付けたいなら、お勧めの方法は、世間で流行したもの(しているもの)をフォローアップすることです。
書籍で喩えるなら、共感力にはロングセラーよりもベストセラ―が有効で、たとえば、1億回以上再生されたYoutubeの動画や、大ヒットした映画や漫画、ミシュラン3つ星のお店などは、知っておいて損はないかと思います。
伝説的マーケッターの「3つの”NOT”」
戦後のアメリカで伝説的なコピーライターであったマクスウェル・サックハイムという人物が、「3つのNOT」という法則を打ち出しています。
彼は、「風と共に去りぬ」や「ライ麦畑でつかまえて」など、不朽の名作を世に送り出した老舗ブッククラブを立ち上げた人物でもあります。
彼が提唱した「3つのNOT」は、広告を見た顧客が購買に至るまでには、3つの壁が順番に訪れるというものでした。
1:NOT READ(読まない)
まずは広告を読ませなければならない。そのためには「反応」させる必要がある。
2:NOT BELIEVE(信じない)
読んだ広告の内容を信じさせなければならない。そのためには「論理」が必要である。
3:NOT ACT(行動しない)
購買という行動に移させなければならない。
3つのNOTを含むライティングの具体的なテクニックは、今後の実践編の中で詳しく解説しますが、さくっと観ただけでも「パトスからロゴスの流れ」に沿っていると感じていただけるのではないでしょうか。
神話の法則や、AIDA、ゴールデンサークル然りです。





