調味料とはあくまでも「味を調える」ものであり、それ自体が主役になることはないというのが世間の定説だろう。
しかしごく稀に、調味料の作り手が「美食」を追い求めるあまり、主役である食材を追い越し、調味料がメインとなってしまうことがある。
二枚目の主役を差し置いて、助演俳優がノミネートされるように。
先日、お世話になっている賢人より、そんな主演殺しの調味料をいただいたので、本日はその品をご紹介させていただこう。

賢人からいただいた鳥羽別邸の「うまみ白醤油」。
あまりに美味すぎて、ぴえん超えてぱおんな逸品だ。※感極まって泣きそうな気持ちを表す言葉
通常、小麦を原料とする白醤油は、素材の味を引き立てるために旨味が抑えられているが、この白醤油は、かつお、昆布、椎茸の出汁を惜しみなく配合しているため、「醤油」の概念を覆すほどの旨味が凝縮されている。
元来、旨味とは、グルタミン酸やアスパラギン酸などのアミノ酸に由来しているため、嗅覚よりはむしろ味覚(味蕾)で感じるものだが、この白醤油は蓋を開けた瞬間に「旨味のフレグランス」が立ち込めるのだ。
私には、醤油をそのまま飲むような変な癖はないが、それでもこの醤油だけは、シャルドネ・グラスを取り出し、沸かしたミネラル水に数滴混ぜて香りだけを愉しんだくらいである。

さて問題は、ここまで醤油が美味しいと、醤油を脇役として考えるのはもはや不謹慎なことであり、いかにして主役とするのか?を考えなければならないことだ。
だし巻きでは加熱によって香りが落ちるし、肉じゃがではじゃがいもに全てを持っていかれる。
考えに考えた結果、シンプルにTKGでいただくことにした。
旨味5割増しの熟成米に、ケージフリーの鶏卵、いくらにしらすを加えて、白醤油をひと回しすれば至高のTKGの完成である。
一国の王に献上してもお叱りは受けないだろう。

この調子であれば、ひと瓶なんてものの数日で無くなってしまう。
鳥羽別邸でしか購入できないため、訪れた際にはぜひ私にひとつ買ってきて欲しい。
お礼に美味なワインを贈らせていただこう。





