人はなぜダイヤモンドに惹かれるのだろう
人類がこれまで一番お金を使った「物」は何だろうか。
王族や権力者たちが、熱心に私財を投じて集めた物は何だろうか。
株? 土地? 金? 車?
いや違う。ダイヤモンドである。
どの時代、どの場所でも、人はダイヤモンドに魅了され、それを集めてきた。
本日は、地球で最も高価なダイヤモンドについて学び、「美」への理解を深めていこう。
王族は、ダイヤモンドを集める
「玉」を囲んで「国」という漢字が出来るように、一国の王は、玉(つまり宝石)を持っていなければならない。
由緒ある名家の血筋であろうと、代々続く土地を持っていようと、玉を持たずして王を名乗ることは出来ないのだ。
たとえば、世界で最も永く続く王室である天皇家は、次の世代に皇位を継承する際に、三種の神器(剣、鏡、玉)に加えて、御由緒物(ぎょぶつちょうしょ)と呼ばれる宝の引き渡しを行う。
以下は、御由緒物の一部であるが、装飾品の殆どにダイヤモンドが使われていることを確認していただけるだろう。
※皇后陛下御正装の装身具類
・ティアラ(ダイヤモンド)
・御頸飾 (ダイヤモンド)
・御胸飾 (ダイヤモンド)
・御襟止( 真珠、ダイヤモンド)
・御襟止(エメラルド)
・御腕輪 (イエロー・ダイヤモンド)
・御腕輪(ダイヤモンド)
・御耳飾(ダイヤモンド)
・御指輪(サファイヤ、ダイヤモンド)
・御指輪(エメラルド、ダイヤモンド)
・御扇子(白鼈甲、ダイヤモンド)
また、世界で三番目に永く続く英国王室のエリザベス女王も、代々引き継いだ宝を所有しており、その内容もダイヤモンドが主役になっている。
・女王の王冠(コ・イ・ヌールのダイヤモンド)
・大英帝国王冠(ルビー、サファイヤ)
・国王の杖(カリナン・ダイヤモンド)
・カルティエのティアラ(ダイヤモンド、プラチナ)
・フリンジネックレス(ダイヤモンド)
・戴冠式のネックレス(ダイヤモンド)
もちろん王族たちは、絵画や陶芸・彫刻などの遺産も所有しているが、ダイヤモンドほど信用された宝は存在しない。
事実1グラム当たりの単価で、ダイヤモンドよりも高い宝石は存在せず、それゆえにスーツケースひとつもあれば、国を興せるだけの資産を持ち出せてしまうのだ。
人類は、時代を超えて場所を越えて、ダイヤモンドに魅了され続けてきたが、その美しさは科学的にも裏付けがある。
ダイヤモンドは3つの視点で特殊なのだ。
1:限りなく透明で純粋
この世界で生命を作ることができる元素は、炭素のみである。
人間も動物も昆虫も細菌も、有機体と呼ばれるものは全て炭素から作られている。
そしてダイヤモンドは、100%炭素だけで出来ている極めて純粋な物質なのだ。
そのため限りなく透明で、仮に1メートルの幅のダイヤの壁があったとすれば、表面で光が反射しない限りダイヤモンドは全く見えない。
2:万物の中で最も硬い
ダイヤモンドは、地球の熱と圧力によって、炭素をこれ以上圧縮できないところまで凝縮した物質なので、地球上で最も硬く、何物も傷を付けることが出来ない。
※ダイヤの構造を人工的に変えれば、より硬い物質を作ることはできるが、天然の物質としては、ダイヤモンドが最も硬い
3:究極の美を体現している
ダイヤモンドの結晶構造(炭素の並び)は、全ての方向で完全に対称性を持つため、光を均一に美しく反射する。
この世界に「絶対」や「究極」というものが存在するなら、それはダイヤモンドの結晶構造であり、その姿は究極の美を体現していると言っても過言ではないだろう。
さて、ここまでの内容で2つの事実が明らかになってきた。
①人は古来から、ダイヤモンドを求めてきた
②ダイヤモンドは、秩序の結晶である
次にこの事実を踏まえたうえで、人はなぜ美を求めるのかを考えてみたいと思う。
人間が生きるためには、酸素を取り込み燃やす必要があるため、形あるものを分解することでエネルギーを得ている。
たとえば食事では、形ある食材を調理し、歯で噛み胃で消化し、最終的に粉々の状態にすることでカロリーを取り出せる。
あるいは自動車を動かす際にも、石油(液体)を燃やして、排気ガス(気体)にすることで走る動力を得ている。
このように、私たちが生きるためには「秩序」を糧にする必要があるため、本能が秩序を求めるように出来ているのだ。
一方で自然界では、無秩序からエネルギーを生み出しているものがある。
たとえば植物は、「光と空気」という形のない無秩序なものを材料に光合成をすることで、実や花・幹や根など姿を持った秩序あるものを作りだしている。
あるいは地球も、内部でガス(気体)を圧縮して、鉱石(固体)を生み出すように、無秩序から秩序を生み出し続けている。
人間は秩序を糧に生きている存在なので、整ったものをみると、自然と「美しい」と感じるのではないだろうか。
改めて考えてみて欲しい。
黄金比に整った建造物をみて「美しい」と感じるのは、なぜだろうか。
整った容姿をみて「美しい」と感じるのは、なぜだろうか。
丁寧に作られた料理に「美味しい」と感じるのは、なぜだろうか。
地球上で最も整ったダイヤモンド(秩序)に、最も高値が付けられているのは、はたして偶然だろうか。
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コメント6件
三種の神器を初めとした国の宝の大半がダイヤモンドで出来ているというのは結構衝撃的でした。
裏で示し合わせた訳でもないのに、各国がダイヤモンドを中心とした物を宝と呼び、最も高値で取引され続けてきた。ダイヤモンドの神秘は素晴らしいですね。
ふと感じたのが、どうして透明感ある肌が好かれるのか、どうして顔が整ってる人が美男美女と言われるのか、こういった「人間関係においてより良く見られる」ためにできる事も、Shoさんのダイヤモンドに対する見解から色々考えられそうな気がしたので、考察してみます。
ありがとうございました!
ダイヤモンドについて、何故これほど価値を置かれるのだろうと今まで疑問でした。私にとっては、ただの炭素の集まり、火事になったら無くなる、という認識だったので…。
ダイヤモンドが最も硬度が高いことは知っていましたが、それだけでなく炭素の純度が高くて透明な事、結晶構造の美しさから「完璧な秩序」なんですね。
そして、人間が秩序を求める為に、完璧な秩序を持つダイヤモンドが高く評価されたというのは納得できました。
新たな発見ができていつも楽しく読ませて頂いています。ありがとうございます。
確かに秩序あるモノには美しいと感じることが多いです。
ダイヤモンドのように、純粋で一貫性のある生き方を目指していきたいと思いました。
見た目や感覚的な話ではなく、ちゃんと科学的な根拠があって、価値が決められているのですね。
世の中にはそういう法則のようなものがあって、人間はそこに美を感じるのだなと思いました。
世界共通の美を学びながら、自分オリジナルの美も追求していきたいです。
美の探求についてを問いかける素晴らしい記事をありがとうございます。
私は昔からイラストを描くのが好きで、その関係でイラストはもちろん、構造物や写真を見る時に自然と美しさを感じ取ろうとするフィルターが作動します。
これまで宝飾品には興味がありませんでしたが、それはその美しさや本質を知ろうとしていなかったことが分かりました。
今回、特に面白いと思ったことは秩序が究極の美しさであり人類が愛すべき形であるならば、人類は国という枠組みを超えて、秩序をもって統一される可能性を感じたことです。
現在は各国それぞれの利害や我よしの考えが強いですが、潤沢に資源も食料もあるならば奪い合う必要がなく、秩序を持って敷かれたルールに則りどんな人種の人も穏やかに暮らすことが出来る。夢物語なのかもしれませんが、そんな未来を想像しました。
なぜダイヤモンドを、
黄金率を、
オードリー・ヘップバーンを
美しいと思うのか。
人間が秩序を欲した本能だとしたら、
人間もつくづく動物なのだなぁと思います。
自分の直感を信じるのも、
時々はわるくない選択なのかもしれません。
そしてダイヤモンドを金剛石と名付けた
日本人(中国人?)には、
もう少し美意識高く翻訳してほしかったな、
と思います。
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