哀れな鶏の物語

ファッションのトレンドが、日々移り変わるように、

健康食品にも、流行り廃りが存在する。

 

キヌアにチアシード、コンブチャに古代米、ビーツにベリーと、

何かが話題になる度に、私は人懐っこいプードルのように飛びつき、

流行と荒廃のサイクルに、びゅんびゅんと振り回されてきたが、

結局のところ、いくら栄養価が高かろうと、口に合わないものは食べなくなるのだ。

 

かつて、一世を風靡したアサイー・ボウルも、

もう地球上で誰も食べてないのでは?と疑いたくなるほど見なくなった。

 

冒険家コロンブスが、引退後に地元の美しさに気付いたように、

私も次第に、世界中のスーパー・フードを発掘するよりも、

日々口にする食品に対して、質を求めた方が良いのでは?と考えるようになった。

 

今日は、そんな基礎的な食品のひとつである

」についてのこだわりをご紹介しよう。

卵は、洋食にも和食にも、主食にもスイーツにも使える万能選手であり、

さらには、ビタミン、ミネラル、タンパク質、脂質をバランスよく含む、

アミノ酸スコア100点満点の完全栄養食である。

 

そんな卵を置き去りにして、スーパー・フードに手を出すというのは、

銀座の鮨屋に来ておきながら、肉巻きおにぎりを頼むような愚行である。

 

もし卵に、懸念点があるとすれば、

日本の養鶏環境は、世界でも最も劣悪なうちのひとつだと言われており、

平均B5サイズの金属ケージで、抗生物質やステロイドが投与されている点だろう。

もちろんその理由は、安く提供するためである。

 

実際にいくつかの養鶏所を観たことがあるが、

そのような環境で育てられた鶏は、大変不健全に感じたので、

多少値段を上乗せしてでも、放牧、または平飼いの卵だけを買うようにしている。

 

最も自然な状態に近い放牧卵は、日本では中々手に入らないので、

私は、価格と質の両輪を踏まえて、鳥取の平飼いの卵「天美卵」を日常使いしている。

送料込みで、1個120円ほどなので、

安い卵と比較すれば、お高く感じるかもしれないが、

1羽の命をまるごと頂くことを考慮すれば、安すぎるくらいだ。

そのままご飯にかければ、何個でも食べられるが、

ちょうど数日前に、実家から、気の利いたハムが送られてきたので、

朝食に、ハム・エッグなんていかがだろうか。


この世界で最も美味な食べ物のひとつ、ポーチド・エッグだ。

私は、ポーチド・エッグに対しては、ひとかどの哲学を持っているが、

話を始めれば、料理が冷めてしまうので、また別の機会に披露させていただこう。

 

慣れないチア・シードを水で戻し、美味しく食べる方法を画策するよりも、

日々口にする卵を、ひとつランク・アップさせる方が、

私たちにとっても、鶏にとっても幸福なのではないだろうか。

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