いにしえを稽える
東京で暮らす魔術師から、「稽古を通して、古(いにしえ)を稽(かんが)えないか?」とお誘いを受けた。
彼が半年ほど前から弓道を始めたことは知っていたので、都内の道場へ向かえば良いのかと思い「いいね」と返したが、指定された場所は東京駅から900キロも離れた森の中だった。
ただ一度の稽古のために、飛行機で向かうのもどうかと思ったが、文句を言っても始まらないので、3名の友人を巻き込んで現地に向かうことにした。
本日は魔術師が手配してくれた「武家屋敷」をご紹介しよう。
我々を迎えてくれたのは、見るからに鍛錬を積んできた「達人」という風貌の男性で、何かつまらないことを言えば、瞬時にのど仏を潰されそうな迫力があった。
しかし幸いなことに、達人は私がこれまでに見たいかなる人物よりも穏やかな性格で「以前はわんこを守る会の会長だったのでは?」と思わせるほど優しい口調で案内してくださった。
武家屋敷の敷地は6万平米もあり、弓道場に武道場、盆石の間に琴の間、寺子屋に能舞台、その他100以上の部屋があり、そしてなんと滝行のための滝まで用意されていた。
これだけの大舞台である。当然、弓や甲冑、剣や矛などの武器も大量に収められており、その気になれば独立戦争が起こせそうなくらいだった。
私は「稽古では真剣も扱われるのですか?」と聞いてみたが、達人は「真剣も扱います」と当たり前のように言った。
まるで筋金入りの菜食主義者がレタスは食べられるかと訊かれた時のように。
ひと通りの案内を受けた後、我々は木刀を使って基本的な剣の振り方を学び、真剣に持ち替え、試し斬りの間に通された。
触れるだけで指が飛びそうな鋭い刀は、持つだけで汗をかくほど緊張し、斬るこちら側が心臓を握られているような威圧感があった。
人類はほとんどの時代において、刀を持ち命懸けで斬り合っていたそうだが、想像を絶するほどタフな世界だったのだろう。
今の我々は平和で牧歌的な時代に生まれたのだ。せめて好きなことに命を燃やしたいものである。
■ご案内
ご存じの通り、館主は偏屈で気難しい人物である。
おそらく友達が少ないため申請してあげると喜ぶに違いない。
館主が集めた「叡智の結晶」は、Youtubeでも公開している。
ぜひ一度覗いてみてはいかがだろうか。
コメント13件
日本には日本の深い歴史と伝統があり、今もなお引き継がれる理由を考えた時に日本の心知らずして世界を語るなとご教示いただいているようです。
日本人として生まれた以上、薄れてきている大事な心の鍛錬とこのような体験が出来ればまた一つ階段をのぼった気持ちになれそうです。
大事なことを教えていただきました。
ありがとうございます。
Shouさん、おはようございます!
お写真から武家屋敷の凛とした空気が伝わってきます。
私は、日本の古き良き伝統を重んじるコミュニティに所属しているので、こちらに参加できた方達が凄く羨ましいです!
本日は、どうもありがとうございました!
Shouさん、おはようございます。
東京という現代から飛行機に乗って武家屋敷という過去にタイムスリップした感じですね。
自然がいっぱいで滝からはマイナスイオンを感じます。
記事を読み進めながら、脳裏には「鬼滅の刃」の画像が離れませんでした。
しかし、アニメでなく実際に刀を持ち命を懸けて斬り合っていた時代はあり…。
その時代を経て現代の平和な時代があると思うと感慨深いです。
平和な今、誰のためでもなく自分のために「好きなことに命を燃やす」☆彡
賛成です!!
素敵なシェアをありがとうございました。
次回も楽しみにしています♪♪
Shouさん、こんにちは。
とても貴重な体験のシェアをありがとうございます。
達人の口調が優しいのが逆に怖く感じましたね(汗)
私がそちらの場所を訪れることがあって、もし達人を怒らせてしまったら
確実に今いる場所に戻ってこれない気がします・・・
鞘に収まっている真剣に手を掛けている写真が、フレアが入っているおかげかどうか分かりませんが、臨場感があり、とても素敵です!
以前は真剣を持って切り合っていた時代で、いつ命を奪われるか分からないことを考えると、改めて「今」を一生懸命生きたい!と思いました。
気づきをありがとうございました。
「いにしえを稽える」今まで生きてきて、そう思ったことは無かったなぁと感じます。
文章や写真から凛とした空気が伝わってくるようでなんだか背筋が伸びるような気持ちになり、道場の世界にとても心が惹かれました。
言葉そのままの通り命懸けで生きていた人々に思いを馳せながら、わたし自身がどう生きていくかについても考えさせられました。
東京都から、900㎞と調べたら。福岡、鹿児島と出てきた。
同じ日本ではあるが、軽い気持ちで行こうと言える場所ではない。
【達人】は写真からでも充分に伝わるほどの迫力。
「何も言わなくても良い。」
あなたの考えていることくらい、表情を見ていればわかるよ。
そんな空気さえ感じてしまった。
敷地などの大きさを例える場合に東京ドーム何個分とよく聞く。
6万平米とは、東京ドームで約1.3個分。
アパート暮らしの私には、理解が出来ないスケールだ。
遥か昔の戦争が多くあった時代のことに触れる機会がない。
知らない世界を減らしたい。これからは、自分の足でその場に向かう
努力をするべきだと考えています。
人を斬る勇気、斬らなければ自分がやられる。
駆け引き、向き合う姿勢。その場に行けば感じられるはず。
今の時代、これからの時代の流れのまま生きていたら。
見ることも、触れることも出来ないことを感じられました。
Kさん。ありがとうございます。
Shouさん、素敵な投稿ありがとうございます!
武家屋敷。
文章を見るだけでとても素敵な場所と体験ができたんだなと感じました!
ただ一度の経験のために、飛行機に乗り900kmも離れた場所に行くというのも度肝を抜かれました。
僕もこういう経験できるように振り切って活動していきます。
次の投稿も楽しみにしています!
Shouさん、こんにちは。いつもありがとうございます。
今回のブログは、冒頭から新たな学びがありました。稽古の「稽」に「稽える(かんがえる)」という読み方があるのを初めて知りました。
ピアノのお稽古、書道のお稽古などと、子供の頃から「稽古」という言葉は何百回も使ってきていますが、その語源について思いを巡らすことはありませんでした。
古(いにしえ)を稽(かんがえる)つまり、「昔のことを調べ、今なすべきことは何かを正しく知る」というのが本来の意味だったようですね。とても勉強になりました。
真剣を使った試し斬りを通じて、「刀を持ち命懸けで斬り合っていた昔のことに思いを巡らし、平和で牧歌的な今、我々がなすべきことは、好きなことに命を燃やすことだ」という結論に至った過程は、まさに真の稽古そのものですね。
Shouさん、いつも素晴らしい体験をシェアしてくださりありがとうございます。
まさか本当に武家屋敷が存在するなんて思ってもみませんでした。
日々鍛錬に明け暮れ、己の技を磨きあげる。それは遠い昔のおとぎ話のようでしたが、歴史を遡れば、剣を持って戦っていた時代の方が長いのですね。
達人の写真を見ると穏やかに微笑んでらっしゃいますが、リアルで会うと達人のオーラと言いますか、某有名漫画の色の付いた覇気を放ってらっしゃるのでしょう。
“真剣”は美術館等で飾られているイメージしかなかったのですが、記事を拝見して一生に一度でも良いから握ってみたいと思いました。
そうすれば、時代を駆けて人と魂をかけて向き合っていた日々を思い出せそうだから。
剣という存在自体は映画やアニメなどでおなじみという感じですけど実際に触れる機会があるのですね。
持った人にしかわかないでしょうけど持つだけでも恐れ多い気がしてしまいます。
昔の人はタフですね。
今日も自分にとっての非日常をありがとうございます。
Shouさん、こんにちは。
文章を読んだだけで、真剣を持った時の緊張感がひしひしと伝わってきました。
刀で戦をしていた昔の人たちが、毎日どれだけ命懸けで生きていたか、も考えさせられます。
人生レベルで深い気付きを得られる素晴らしい体験ですね。
僕も自分の人生に命を燃やしていきたいです。
なかなか体験出来ない素敵な「非日常」ですね。
五体満足で恵まれた環境にいるからこそ、
全力で夢中になれることに没頭していきたいです。
Shouさん、いつも素晴らしい体験をありがとうございます。
僕は大人になってから剣道を始めましたが、真剣を交えていた時代に思いをはせると、気が引き締まります。真剣を握ると、自然と眼光も鋭くなりますね。
日本は剣から創られた国ですからね。
他では味わえない素敵な記事をありがとうございました。
次回も楽しみにしています。
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